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いい家ってなんだろう

POSTED / 2020.10.26

家を建てる前に、インターネット、本での情報収集はもちろん、実際に家を建てた方にお話を聞いてまわりました。私達の結論は、「長い間住める丈夫で愛着の持てる家」でした。

「長い間」というのは、自分達の代で終わりではなく、子供達にももっと使ってもらえるような期間のこと。

「丈夫」というのは、地震や結露などに対して心配しなくてもいい構造、機能を持っていること。

「愛着が持てる」とは、家の快適性はもちろん、時間が経つにつれて美しい家になること、哲学(というとおおげさならこだわり)があること。

以上を満たす家を作ろう思いました。

その答えの半分は、永年の風雪に耐え残っている美しい信州の民家でした。郷里では、戦時中にほとんどの民家が焼かれてしまっていたのでなかなか見ることができませんでしたが、信州は昔ながらの立派な家が多く、答えを探す上では幸運でした。 次に考えたのは、「どこに頼むか?」でした。

 

考えた条件は、以下の3つでした。

1つ目は、企画設計から、実際に現場で家を建てる大工工事を一貫してできる棟梁がいること。私自身、もの作りを仕事にしていますが、そこでは「品質」ということがすごく大事になってきます。

「品質」とは定量化できる単なる機能面だけでなく、仕上げの美しさ、動きの滑らかさ、かっこよさという定性的感性的なものまで含みます。このような「品質」は言葉では伝わりにくく、ましてや家のような大きなものをすべて細部にいたるまで品質を確保するのは至難の業だと思います。

しかし、自分としてのひとつの回答は、たとえばエルメスのバッグのような設計、製造、監査までを一貫して一人の職人がこだわって作る物作りと同様に、設計から大工工事まで一貫してできる棟梁が中心となる家作りだと思っています。

 

2つ目は、確かな技術があること。

実際に既に建てられた家を何軒か拝見させていただいたときに、追掛け大栓継ぎや火打ちを蟻で落としているところなど、プレカットでは絶対にできない手による組み方を見たときに確信しました。

また、実際のお仕事を見ていても、たくさんの鑿や鉋を使ってお仕事をされていて、法隆寺・薬師寺の宮大工棟梁西岡さんの言葉を思い出しました。「本物の大工かどうかを見分けるには、道具の数を尋ねるとよい。」

 

3つ目は、なによりもこだわりを優先していること。

手間隙をかけてくれるということ。 実際に家作りが始まってから奥平さんのこだわりに何度も触れました。例えば通気孔。通気という機能のみなら、単純に四角い穴を空ければ済むことだと思います。

でも奥平さんは、家の前で見つけた4つ葉のクローバーをヒントに、わざわざ4つ葉のクローバー状の通気孔にしてくれました。他にも太い梁、美しい建具と枚挙にいとまがありません。

 

奥平さんとお話をしていると、ときどき、まるで奥平さんが自分で住む家のようにお話をされることがあります。なんだか少しおかしくなってしまう半面、そこまで思い入れをもって家を作られているんだなということが実感できました。

「長い間住める丈夫で愛着の持てる家」、そう言える家ができたと思います。

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